「ちょっと待って」
夜道を歩いて帰っている途中、不意に彼女に呼び止められました。アスファルトの上をよく見ると、セミの幼虫がウロウロしていました。抜けがらはよく見かけますが、生きている幼虫を見たのは初めてかもしれません。
とにかくノロノロと歩きます。しゃがんでじっと眺めていたら、どんどん寄ってきます。どうやら僕を木か何かと思ったようで、よじ登り始めた…と思ったら、僕の靴に爪を立てて、動かなくなってしまいました。
このまま羽化に入られるとセミも僕もお互いに苦労しそうなので、近くの木の幹に移そうと思いました。彼女が蝉の前に指をさしだすと、幸い再び登りはじめました。それを僕が受け取って、木まで持って運びました。
幼虫は驚くほど力が強くて、僕の指がきつく締め付けられました。木の幹に移した後も、本当にノロノロだけれども、一心不乱に登っていきます。セミにもし感情があったら、どういう心境で今この時を迎えているのでしょうか。
最初僕の胸の高さのところにいたセミが、僕の背丈よりも高く登って行ったのを見届けて、帰宅しました。本当に短い時間だったけれども、今日あのセミが僕に残した触感は、僕の一生の思い出になるような気がします。
(この日、2008-07-29 の 65 セッションを超える、一日当たり 76 セッションを記録し、最高記録を更新いたしました。ご訪問ありがとうございます。)
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