1990 年代の南アフリカ共和国で、ネルソン・マンデラ大統領が、白人・黒人間の融和をいかに進めたかを、ラグビーを通じて描いた映画。ネルソン・マンデラ大統領の政権下で、こんなにも劇的なドラマがあったのかと、驚いてしまいました。当時、中学生だった僕は、ラグビーにも南アフリカにも、そんなに興味が持てずにいたからでしょう。すがすがしい感動的なドラマで、すべての人におすすめできますが、子供にはちょっと難しいかな。
※ 以下はネタばれを含みます。
映画はネルソン・マンデラの釈放と大統領就任から始まります。就任直後からマスコミ(白人中心)の批判をあびるマンデラ大統領は、祖国の統一のために「国民には誇れるものが必要」だと感じていました。そこで(劇中語られないものの、かつて強豪で鳴らした)ラグビーの代表チームを再び強豪として蘇らせることを考えます。
手始めに、チームの主将(白人)と茶会を開いて会談し、彼の心を大きく動かすことをはじめます。ここがネルソン・マンデラという人の凄さなのですが、とにかくすっかり大統領に感化された主将は、祖国統一の誇りとなるべき自覚を持って、翌年に迫るワールドカップでの優勝を誓います。その主将が、今度はチームメイト(ほとんどが白人)達の心を必死に動かしてゆくことになります。
ところが主将以外の選手たちは、黒人との融和に否定的でした。政治の激変に伴って、南アフリカ共和国では国旗も国歌も新しく制定されなおすことになりました。ワールドカップに出場するラグビー・チームのメンバーにとって、国歌の斉唱は避けられず、新しい歌詞が選手たちに配られるのですが、白人中心の選手達は最初、それをゴミ箱に捨ててしまいます。また、ラグビーを観戦しに来る客には、あえて旧国旗を振る人もたくさんいました。しかし、「一つの国、一つのチーム」というスローガンのもと、黒人の子供たちや大統領との交流を通じて、選手たちも次第に態度を軟化させてゆき、クライマックスのワールドカップ会場では、選手・観客が新国旗のもと新国歌を斉唱し、感動的なフィナーレを迎えます。
日本で国旗・国歌法が制定された背景はなんとも情けないものでしたが、国旗・国歌の徹底が、たとえば南アフリカ共和国で起こったこのような「熱狂」に対するあこがれから来ているのだとしたら、それはどうも手順を間違えているような気がします。その原動力を生むのは法律でもお金でも旗でも歌でもなく、人の力なのだということを、この映画は教えてくれるからです。
一方で時代に合わせた新国旗・新国歌というものも大切なのだと感じました。たとえばドイツやイタリアでは、戦後に国旗を制定しなおしています。アメリカも現在の国旗ができたのは 50 年前ですし、ロシアもソヴィエト崩壊に伴って国旗を改正しています。日章旗が国旗とみなされるようになってすでに 150 年、終戦直後という改正に一番都合のよい時機を逃してしまったことは、日本にとって大きな不幸だったのではないかと、そんなことをも考えさせられた映画でした。
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