最後の指導を終えて、車で家路につく。このところは『The Guitar Trio』というアルバムを聴きながらドライブをする事が多いのだが、あと一回で指導が終了する生徒の家を出てきたばかりだったので、オーディオのスイッチを入れずに、これまでの事を思い返しながら運転していた。
すると、耳慣れない音を車が発していることに気が付いた。木刀を振ったような「フォン」という音が小刻みに聞こえるのである。ちょっと人間が木刀を振るスピードではとても実現できそうもない、秒間 4 回程度の「フォフォフォフォフォ!」という音である。異音の発生源はどうも前輪のような気がする。アクセルを踏んだり、ブレーキを踏んだりすると音がやむ。つまり、ペダルから足を離して、自然に減速している最中だけ聞こえてくる異音である。
その異音が明らかに、どんどん大きくなってきた。なんだかハンドル操作に対する車のレスポンスもおかしいような気がする。次第に疑心暗鬼に陥ってしまって、小石を踏んだ音や、前の VIP 車のマフラーから聞こえる「ポンッ!」という音にまで恐怖を感じる。この日の最後の家庭から僕の自宅までは、片道およそ 15 km ある。異音に気付いたのは 3 km 地点あたりだったが、5 km 地点ほどまで走ったころには、もう怖くてたまらなくなってしまった。絶対に前輪に何かがある。
10 km ほど走った地点でようやくコンビニにたどり着いた。明るい所に車を止めて、まずは右前輪のホイールキャップを外す。こちらは何ともない。キャップを元に戻して、今度は左前輪のホイールキャップを外す。すると、4 本のボルトがすべて緩み、うち 2 本はナットがほとんど外れかかっていた。慌てて締め直して事なきを得たが、万が一この日も『The Guitar Trio』を大音量で聴いていたら、気付かないまま脱輪していたかもしれない。ついその前日に実家から福島に帰ってきたばかりだったが、こんな状態で高速道路を走行していたのかと思うとぞっとする。
ホイールキャップをいちいち外すのは大変に面倒だが、今度からは定期的に確認してみようと思った。皆様もお気をつけ下さい。
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